【東京事変】の「赤の同盟」について、歌詞の意味を徹底的に考察および解説していきたいと思います。
✔ ドラマに寄り添った世界観
✔ タイトル「赤の同盟」の意味
✔ 語られる人間関係の在り方
✔ 「不要不急」でなく「必要火急」…?
愛憎渦巻くミステリードラマの主題歌で、東京事変は何を歌ったのか。是非最後までお読みください…!
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ドラマ「私たちはどうかしている」主題歌
今回紹介していく「赤の同盟」は、東京事変が日本テレビ系ドラマ「私たちはどうかしている」の主題歌として書き下ろした楽曲です。
ドラマは15年前に起こった殺人事件を巡り、浜辺美波さん演じる和菓子職人・花岡七桜と横浜流星さん演じる老舗和菓子屋跡取り・高月椿が過酷な運命に翻弄されていく物語。
「容疑者の娘」「被害者の息子」という特殊な二人の間柄や周囲の人間との歪んだ関係性も相まって、愛憎渦巻く混沌としたラブミステリー作品となっています。
東京事変は楽曲について、
この度は目眩く原作と華やかな配役に否が応でも期待高まる新作ドラマ主題歌をご注文くださり、ありがとうございます。
昨今人と人との結び付きを物理的なぶぶん以外で感じ、捉えるべき状況が繰り広げられています。しかしもともと他者を慮るには並々ならぬ知性つまり優しさが要りますよね。全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか考える切欠をもたらす本ドラマ、みなさんといま分かち合いたいものです。
どんなときも愛を込めて。東京事変2O2O。
とコメントを残しています。
たいへん東京事変らしいコメントですが要約してしまえば、コロナの影響で物理的な接触を避けながら他人と結びつかなければならない昨今ですが、元より相手を思いやることは相当な技量を要するものである、ということ。
「赤の同盟」はドラマのストーリーを受け、改めて人間と人間の関わり方について考える作品になっているようです。
歌詞の考察に移る前に、タイトルの「赤の同盟」について確認しておきます。
楽曲名「赤の同盟」とは
「赤の同盟」とだけ聞くと解釈に悩むところではありますが、楽曲には「Alianza de sangre」という西題が与えられています。こちらを参考にタイトルについて考えていきましょう。
「Alianza de sangre」はスペイン語で、直訳すると「血盟」。
「血盟」は「互いの血をすすり合ったり血判を押したりして固く誓い合うこと」という意味です。
そういえば東京事変の椎名林檎さんは出演したミュージックステーションにて、楽曲について「血が通ったもの同士目的は同じようなもの、同盟の様なものだから仲良くやろうや」という想いを込めたのだとコメントされていました。
こうしたことから考えると、「赤の同盟」というタイトルは「血盟」という物騒な字面に反して、どうやら「血の通った人間同士、血盟のように固く結びつき合って仲良くやっていこう」というかなりポジティブな思いが詰まったものであるようです。
この楽曲名が歌詞の内容とどう関与しているのでしょうか。
さっそく歌詞を見ながら考察していきましょう。
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歌詞
ええい何が起きても結構
どんな騒ぎへもてんで乗じません
きっと全人類手を取り合えるように (アーメン)嗾けられて狼狽えたって
ヒントも答えもてんで生じません
先手打っといてもう逆ギレしないで (ガッデム)まあ一回打算を排してよ警戒心
この緊張状態を解いてよ嫉妬なども処分
ちょうどいいはずお互いに
弱点は断固正視しないもんね
自分自身もろとも見失う大嫌いの定義や大好きの方程式とは
バイアス決め込んで競って不毛です
よって言語を経由しない原初の衝動を
呼び覚ましたい思い出したいです愛を宿してどうしてなお
恐怖へ追従しているの
信じて疑うを昼夜往復し
関係に支障を来すまで
突っ走っちゃうどっちへも
止まれない制御不能です
早よう捕まえてくれ
まだ知り合えていないねえ弄ぶにもエチケットを
狡猾な罠で釣ってはいけません
礼を欠いといて即駆け引きしないで (ジーザス)じゃ一回出会い直してよ悍ましき
あの一切合切葬ってよずっと新しく
感じるでしょうお互いの
相乗効果欠陥を美点として動かせる凸凹なんだと大嫌いの原理も大好きの法則さえも
まったく逆なんて却って貴重です
結果倍/自乗倍網羅し両者の情動を
分かち合いたい覚えていたいですだって私たちは生きている
脅威を吸い込んでいま
本音と建前とを一緒くたに
人生に保証はないもの
欲していたいよ万事を恋い慕いたい
必要火急です
早よう捕まえさせて
いつも変わっていきたい
作詞:椎名林檎
歌詞の意味・解釈
1番
ええい何が起きても結構
どんな騒ぎへもてんで乗じません
きっと全人類手を取り合えるように (アーメン)
「きっと全人類手を取り合えるように」という平和祈願のような歌詞から楽曲はスタート。
「アーメン」はキリスト教において祈りの後に唱えられる言葉です。
東京事変のコメントの中にもありましたが、どうやら「赤の同盟」は「全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか」というのが大きなテーマになっている様子。
「どんな騒ぎへもてんで乗じません」とあるように、楽曲のスタンスとしては異なる都合を抱えるもの同士の争いには参加するつもりはありません。
いつか全人類に平和な関係がもたらされるように、無意味に争いたくはないのでしょう。
抽象的な歌詞であるので、解釈は恣意的な内容を大いに含みます。ご了承ください。
嗾けられて狼狽えたって
ヒントも答えもてんで生じません
先手打っといてもう逆ギレしないで (ガッデム)
世の中物騒なもので、国際情勢を見てもTwitterの個人のやり取りを見ても、喧嘩をけしかける輩で溢れかえっています。
ドラマ「私たちはどうかしている」の世界も然り。
異なる都合を抱える者同士の間で揉め事が起こるのは世の常というものです。
しかしながらそこで狼狽えて行動を起こしたところで何も生まれない、と楽曲は大人な対応を崩しません。
先述の通り、争いに乗っかるつもりはないのです。
「ガッデム」は英語圏のスラングで「くそったれ」。
それでも大人な対応に逆ギレしてくる相手に対しては、ここでは不快感が露わにされています。
まあ一回打算を排してよ警戒心
この緊張状態を解いてよ嫉妬なども処分
ちょうどいいはずお互いに
弱点は断固正視しないもんね
自分自身もろとも見失う
先ほど「ガッデム」と吐き捨てたものの、ここでは「まあ落ち着きましょうや」と相手を鎮めます。
利害の勘定とか警戒心、緊張や嫉妬は一旦捨てましょう、と。
先ほど述べた通り、楽曲テーマは「全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか」。
異なる都合を抱えてるってことはちょうどいいはずでしょ?
独りでは自分の弱点と向き合おうとは断固としてしないでしょ?
といった具合に、ここでは分かり合えない相手と関わり合うことをポジティブに捉えているように思います。
サビ1
大嫌いの定義や大好きの方程式とは
バイアス決め込んで競って不毛です
∴言語を経由しない原初の衝動を
呼び覚ましたい思い出したいです
何が大嫌いでどんなものが大好きか。
そんな価値観の議論は、お互い根本的に違うのだから極めて不毛なものです。
そこで争ったって仕方がない、と。
だからそんな言語化された「好き」とか「嫌い」とかじゃなくて、もっと人間が生来抱えている原始的な衝動を呼び戻したい、と楽曲では望まれています。
「こういう理屈で好き」とか「こんな論理で嫌い」とかじゃなくて、もっと直感的で本能的な部分を呼び戻せれば価値観が違う人ともうまくやれるんじゃないか…
上手く説明するのは難しいですが、そんなことがこの部分の歌詞では歌われているのではないでしょうか。
「∴」は数学などで用いる学術記号で「よって」。定義、方程式、「∴」と意図的に数学関連の用語が用いられています。
愛を宿してどうしてなお
恐怖へ追従しているの
信じて疑うを昼夜往復し
関係に支障を来すまで
突っ走っちゃうどっちへも
止まれない制御不能です
早よう捕まえてくれ
まだ知り合えていない
人間、人を愛して尚、抱える都合の違いに見えない恐怖を感じては相手に対して疑心暗鬼に陥るもの。
疑いの心や信じようとする心は両極端に振れてしまって、もはや制御できるものではありません。
極端に人間不信になってみたり、誰かを妄信してみたり。
人間関係を達観するような立場をとってきた楽曲ですが、ここでは心が揺らいでいます。
早く私を捕まえてくれ。
信じるとか信じられないとかどうでもよくなるくらいの、運命的な出会いをくれ。
そんなことを願う誰か。
しかし未だその相手とは知り合えていないようです。
2番の歌詞では、そんな誰かを【捕まえる】人物が現れます。
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深くて思考が生き返る