【マカロニえんぴつ(通称:まかえん)】の「八月の陽炎」について、歌詞の意味を徹底的に考察および解説していきたいと思います。
✔ 「八月の陽炎」の真意とは
✔ 夏特有の躁鬱を感じさせる名曲
✔ はっとりさんの言葉遊びの秀逸さ
上手くいかない青春を描いた、マカロニえんぴつのサマーソングを深堀していきました。はっとりさんが綴る巧みな歌詞を一緒に見ていきましょう!
スポンサーリンク
青春なんて上手くいかないもの
今回紹介していく「八月の陽炎」は、大正製薬『コパトーン』新CMソングとして書き下ろされた楽曲。
本楽曲について作詞作曲を担当したはっとりは
普段、僕らの曲は「夜」をイメージした曲が多いのですが、日焼け止めの商品なので、暑い日差しに負けぬよう駆け抜ける青春をテーマに、夕焼けや、グラウンドを走る姿などを想像しながら、燃える陽炎をイメージして作りました。また、自分にとって本当に信じられるものを探していくのが青春のひとつだと思うのですが、「全部うまくいく青春なんて、つまんねー」というCMテーマと、サビの最初の「本当のことはひとつだって知りたくない」というフレーズの部分などでリンクしていると思います。
とコメントを残しています。
はっとりさんのコメントから
- テーマは駆け抜ける青春
- うまくいかない青春
というのが本楽曲の大きな輪郭としてあることが分かります。
楽曲をリピートしていた方は、このコメントを見ただけで歌詞のフレーズが頭に浮かび「あ、ここはそういうことか!」と感じたのではないでしょうか。
歌詞だけを切り取って見ると情景理解の難易度が高いのですが、うまくいかない青春というのを念頭に置いておくとフレーズ1つ1つが腑に落ちてくるのです。
ではさっそく本題の楽曲考察に移っていきましょう。歌詞解釈の前にまずは楽曲タイトル名に着目していきます。
楽曲名「八月の陽炎」とは
「陽炎」とは
強い日射で地面が熱せられて炎のような揺らめきが立ちのぼる現象のことを言います。
真夏の地平線に見ることのできるあのメラメラです。
本楽曲においては2番のAメロで「地平線の向こう 八月の陽炎」と、タイトル名が歌詞の中に起用されています。
どういった意図で歌詞にタイトル名が起用されているのかは、歌詞の流れを見ていくと分かるのですが、始めに言っておくと陽炎の発生条件が大きく関与しています。(ここは下記の歌詞解説欄でお話ししていきます)
また「陽炎」という言葉ばかりを言及しましたが、八月の陽炎の「八月」は「晩夏」を表す言葉として起用されています。
灼熱の夏の始まりと終わり、その両方が凝縮される八月に主人公はいったい何を想い、感じ取ったのか。
前置きはこの辺りにして、ここから本題の歌詞を深堀していきます。初っ端から歌詞の巧みが炸裂していきます!
スポンサーリンク
歌詞
言葉はファッションではないからさ
飾れど重ねど、どうも上手くキまらないもんだな
正しさと間違いのあいだに 悲しさと勘違いの愛に
何度も折り合いをつけてきた
待った無しの人生でいつも待ち合わせて
少しの居場所を分け合った
運命は作り話と言った彼女が女神にみえた八月の陽炎言葉は壁やガラスであってほしくはないのに
想いを伝えた代償はいつも割れた孤独なんです
正しさをおしえてくれたのは間違えて出会ったあなただった
いつもそうだった
分かっていないふりで じつは知ってたんだ
少しの居場所を譲ってくれてありがとうサンセット 本当のことは一つだって知りたくないのさ
サンセット あこがれた通り僕は正直に僕を騙してる
茹だるような紫の影、君への想いも無理に冷ました夏
濡れたままのシャツ地平線の向こう 八月の陽炎
きっとずっと十代の自分が居る
見たくない真っ黒のそれに生き先を尋ねてたサンセット 本当のことは一つだって知りたくないのさ
サンセット あの人みたいに僕は正直に僕を騙してる
茹だるような紫の影、君への想いも無理に冷ました夏
乾いてゆくシャツ作詞:はっとり
歌詞の意味・解釈
1番
言葉はファッションではないからさ
飾れど重ねど、どうも上手くキまらないもんだな
正しさと間違いのあいだに 悲しさと勘違いの愛に
何度も折り合いをつけてきた
前提としてお話ししておくと、前章でも述べたように本楽曲では「上手くいかない青春」が泥臭く、そしてリアルに描写されていく。
もっと具体的に言うと「失恋」といったまさに上手くいかない青春の代表と言っても過言ではない要素を多分に含みます。
そして1番のAメロは歌詞の中でも特に秀逸的で、韻を踏んだり意味を重ね合わせたりと、言葉で遊びながら共感できる情景が描かれる。
歌い出しは「言葉」と「ファッション」の掛け合わせ。
どちらも格好つけたり、相手の気を引いたりと類似する部分が多いのですが、言葉はファッションと違って、上手に着飾れば光るものではないですよね。
青春というものに「恋」という出来事は付き物。しかし青春時代の恋なんて、かける言葉1つすらうまくいかない非常にもどかしい駆け引きのようなもの。
解釈の余白を残した歌詞は、聴き手それぞれの泥臭くて共感深い青春の情景を確実に浮かび上がらせる。
また韻を踏んで綴られる「正しさと間違いのあいだに悲しさと勘違いの愛に」というフレーズは、友達以上恋人未満の男女関係だったり、一方的な片想いだったり、若い頃特有の恋愛模様を連想させるものとなっている。
全てが上手くいく綺麗な青春なんて本当つまらないですよね。失敗や苦い経験があるからこそ、かけがえのない絶対的な想い出として、いつまでも輝くんですよね。それを本歌詞はすごく巧みに表現しています。
待った無しの人生でいつも待ち合わせて
少しの居場所を分け合った
止まってくれない(待ったなし)人生の中で、人に合わせて待ち合わせをすることが皮肉めいた表現で描かれています。
ここのメッセージ性としては、人に関わることは止まらない人生で止まってしまうだけの価値があるということなのかなと解釈しています。
出会って同じ時間を共有して、、、というのはその人の人生において限りある居場所に入り込むということですよね。僕たちは知らず知らずのうちに自分の居場所に誰かを当てはめて生活をしています。
この「居場所」の捉え方次第で後の歌詞の見え方が変化してきます…!
運命は作り話と言った彼女が女神にみえた八月の陽炎
言葉は壁やガラスであってほしくはないのに
想いを伝えた代償はいつも割れた孤独なんです
作り話とは嘘の話であること。
つまり「運命は作り話」というのは、主人公にとってうまくいかなかった青春(運命)を嘘なんだと、いくらでも作り直せるんだと言っているに等しいものです。
「運命は作り話と言った彼女が女神に見えている」
すなわち主人公は上手くいかないことだらけの現実に悔やんでいるのです。
下の2行も同様に上手くいかない悔やみが描かれていて、その一端として失恋の情景が描かれています。
言葉はあなたとの間にバリアを張るものではなく、あなたとの距離を近づけるものであってほしいのに、なぜか望んだ通りにはならない。
多くの男女が青春時代に経験した苦い想い出を想起するのではないでしょうか。
とここまで「うまくいかないことだらけ」の鬱憤が描かれてきましたが、次の歌詞からは情景が少し明るくなってきます。
正しさをおしえてくれたのは間違えて出会ったあなただった
いつもそうだった
分かっていないふりで じつは知ってたんだ
少しの居場所を譲ってくれてありがとう
前々フレーズで「居場所」の捉え方について言及しましたが、そこの回収が上記歌詞になります。
ここに登場する「あなた」は1つ前のフレーズで主人公を孤独にした相手。つまり失恋相手です。
ただその相手を責めるのではなく、ダラダラと落ち込むわけでもなく「ありがとう」と言って主人公は気持ちに整理をつける。
なぜなら相手は少しの居場所を譲ってくれたから。
望み通りの結果にはならなかったものの、あなたは限りある空間の中に自分を招き入れてくれて、その中で恋という感情を与えてくれたのです。
「少しの居場所を譲ってくれてありがとう」
君が思い出になったことも含めて、存在そのものに感謝するという素敵な解釈。これが何気ないフレーズの中で歌われていたのです。
サビ1
サンセット 本当のことは一つだって知りたくないのさ
サンセット あこがれた通り僕は正直に僕を騙してる
茹だるような紫の影、君への想いも無理に冷ました夏
濡れたままのシャツ
サンセットとは陽が沈むことで、本楽曲の歌詞においては「夏が終わること」「青春の魔法が解けること」というような夏特有の浮かれた感情が無くなっていくことを示しているのだと思います。
1番の後半で「少しの居場所を譲ってくれてありがとう」なんてポジティブ解釈をしていましたが、その心底に潜む感情が上記歌詞の「本当のことは一つだって知りたくないのさ」に当たる。
八月の陽炎(茹だるような紫の影)が見える夏の中で、主人公の気分は絵に描いたように浮き沈む。
青春の中で揺れ動く主人公。最後はどんな心情を彩っていくのでしょうか。続く残り少ない歌詞を見ていきましょう!
スポンサーリンク
コメント