【女王蜂】の
「BL(読み方:ビーエル)」について
歌詞の意味を徹底的に
考察および解説していきたいと思います。
・主人公のしたたかさ・異質性
・追い込まれていく「きみ」の結末
上記が本記事の見どころです。
身の毛がよだつほどのダークな世界観に驚愕しました、、、
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楽曲の基本情報
今回紹介していく「BL」は、2020年2月19日にリリースされアルバム『BL』の表題曲であり、向井理が主演を努めるサスペンスドラマ『10の秘密』のオープニングテーマとして起用される。
そのため本楽曲は、サスペンスならではの不安や緊張、不安定な心理が強調されるような仕上がりになっています。
作詞作曲を努めたアヴちゃんのコメントは以下。
女王蜂が火曜9時台ドラマのオープニングテーマを担当する日が来るなんて。心のどこかでは思っていたけれど!お誘いを頂いたときはやっぱり、とてもうれしかったです。
ドラマの題名に10が付くと聞いて、わたしたち女王蜂も丁度「十」と言うアルバムを発表していたので、とても運命を感じていたら「とても運命を感じています」と、先に言って頂けて。
ほーんとに登場人物誰ひとりとして観てるひとの思い通りにならない、裏切ってくると言うよりも全員がものすごく強かで弱い、すごい本だな、と台本を読んでいて思っていたので…映像が付いたらどうなっちゃうんだろう。
2月に発売する女王蜂の新作アルバムから、表題曲であり虎の子「BL」が、ドラマから流れます。
ミステリアスなオープニングをたのしんで、そしてフルでこの曲を聴いてみて欲しい!このような曲がドラマから流れてくること自体、とってもすてきで面白いことだと思うのです。
作ったわたしたちも驚いているくらい、お気に入り。
是非たのしみましょう!
楽曲やドラマに対する愛情が伝わってくるコメント。また「登場人物誰ひとりとして観てるひとの思い通りにならない、裏切ってくると言うよりも全員がものすごく強かで弱い」というアヴちゃんのコメントは楽曲を紐解いていく糸口になりそうですね。
ではさっそく楽曲考察に移っていきましょう。まずはタイトルに着目。
楽曲名「BL」とは
まず「BL」と聞くと多くの方が
「ボーイズラブを意味するのかな?」
と思うのではないでしょうか。
確かにアヴちゃん自体が中性的な見た目かつ発表されている性別も不明であるため、私もはじめはその線を考えました。
加えて先行公開されたジャケット絵が有名ボーイズラブ作者の「はらだ先生」であったため「あ、やはりボーイズラブなんだな」と確信していました。
しかし楽曲をしっかり聞くとそれはひっくり返される。
歌詞中で
と繰り返されるように「BL」は上記の略。
また他にも「ブラックリスト(Black List)」や「ボーダーライン(Border Line)」と歌詞があるように、「BL」は複数の意味の含みもあるのだろう。歌詞からは特にブラックの要素が強いことが読み取れる。
ちなみにボーイズラブのジャケットを起用したのはBLで掛け合わせた遊び心だと筆者は解釈しています。
アヴちゃんが描くブラックな世界。
この楽曲名が歌詞の内容と
どう関与しているのでしょうか。
本題の歌詞に迫っていきます。
歌詞
ムスク ミント ヴァセリン
しーっ 脱がすカルヴェン
なぞる指とくちびる
きみはいつもイケてるシーツ乱す楽園
滑る肌にBlack & Blue
怒鳴るパパは潰れてる
さぁ、ここを噛んでヴァンパイアふたりまるで ボニークライド
バンバン 蜂の巣にしちゃうぞ
みんな楽しいんでしょ?なんで暗いの
ハートに杭打って吊るし
黒く染めてJACK!スペード
そう、ブラックリストに名を連ねるのBlack Love! Black Life!
Black Love! Black Life!きみと浮かぶバスタブ
まるでメリーゴーラウンド
投げてよこすダメージジーンズ
そろそろ出かけようヘンゼルとグレーテル
お菓子の家へ行くよと ふたりの手には
お揃いのビニール袋と吐きダコきみがいつも溶かすパチスロ
黙って抜かなくても
ねぇ、楽しいんでしょ?なにがつらいの
やめなきゃ負けないって言うでしょ
いくらでも貸してあげるよ
でも、飽きたら捨てちゃうけど
(cuz I love daddy!)Black Love! Black Life!
Black Love! Black Life!鼻から吸わないで
ボーダーラインを引かないで
光る車に乗りたいなら電話してあげるよ
割れた画面よりもふたりの目だけが光る
しーっ 脱がすカルヴェン
ねぇ、こんなとこにピアスBlack Love! Black Life!
Black Love! Black Life!
Black Love! Black Life!作詞作曲::薔薇園アヴ
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歌詞の意味・解釈
1番
ムスク ミント ヴァセリン
しーっ 脱がすカルヴェン
なぞる指とくちびる
きみはいつもイケてる
まず歌詞冒頭の
- ムスク
- ミント
- ヴァセリン
は香りや保湿剤などを指す。簡易的にまとめると体につけるものといった共通点がある。
そして続く歌詞の「カルヴェン」は
フランスの老舗ファッションブランド「CARVEN」
のことを指している。
つまり本楽曲の歌詞を一つの物語として捉えると、冒頭歌詞から読み取れるのは、主人公と「きみ」がこれから交じり合おうとしている情景であることが分かります。
これからどう展開されていくのでしょうか。歌詞を追っていきましょう。
シーツ乱す楽園
滑る肌にBlack & Blue
怒鳴るパパは潰れてる
さぁ、ここを噛んでヴァンパイア
ここで歌詞の情景は急展開を迎える。
目を引くのは「パパ」という歌詞。ここから主人公と「きみ」の関係性を読み取ることができる。
一般的に思いつくのは「パパ活」といった関係性かなと思いますが、歌詞全文を読み取った結果、やはりそのような関係性が濃厚ではないかと解釈しています。
つまり純粋なラブではなく、利用するラブが描かれているのです。だからMVでも金がまき散らされるような情景が描かれている。
「怒鳴るパパ」などの情景も、不穏な空気感を強調しており、二人の関係性が「逸脱」していることを表しています。
ふたりまるで ボニークライド
バンバン 蜂の巣にしちゃうぞ
みんな楽しいんでしょ?なんで暗いの
ハートに杭打って吊るし
黒く染めてJACK!スペード
そう、ブラックリストに名を連ねるの
ここの歌詞は
- ボーイズラブの線を打ち消す意味合い
- 主人公が異質で、したたかであること
上記2つの情景読み取れる内容になっています。
まず「ボニークライド」が1つ目の仮説を裏付ける。
これは「ボニーとクライド」の人名を意味しており、二人は1930年代前半にアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した、「ボニー・パーカー」と「クライド・バロウ」からなるカップル。
つまり「ボニークライド」は
- 二人が男女の関係であること
- 二人が異質的な関係であること
を意味してるのです。
そしてさらに
ブラックリストに名を連ねる
までの歌詞が主人公のしたたかさ・異質性の理解に拍車をかける。
といったところでしょう。やはり恐ろしいくらいのしたたかさが描かれている。
<サビ1の解釈は一旦割愛します>
2番
きみと浮かぶバスタブ
まるでメリーゴーラウンド
投げてよこすダメージジーンズ
そろそろ出かけようヘンゼルとグレーテル
お菓子の家へ行くよと ふたりの手には
お揃いのビニール袋と吐きダコ
2番の歌詞は1番の情景と類似した光景を繰り返すような構造になっている。
前半の歌詞は、まさに1番と同じような二人が絡み合うシーンであり、「ヘンゼルとグレーテル」は「ボニークライド」と同じようなポジションである。
さらに類似しているのは不穏な情景も然り。
「ダメージジーンズ」や「ビニール袋と吐きダコ」など、まさに逸脱した歌詞は直感的に異質性を感じさせる。
ちなみに「吐きダコ」というのは
「拒食症」や「摂食障害」で指を口に突っ込んで嘔吐を繰り返すと手に出来るタコのこと。これらの症状は精神的疾患の合併症として患うことが多い。
抜け目なく不穏な情景が繰り返されていきますね。また1番2番で同じような情景が繰り返されるさまは、主人公が「きみ」をとっかえひっかえしている様子と重なるのかも知れない。
きみがいつも溶かすパチスロ
黙って抜かなくても
ねぇ、楽しいんでしょ?なにがつらいの
やめなきゃ負けないって言うでしょ
いくらでも貸してあげるよ
でも、飽きたら捨てちゃうけど
(cuz I love daddy!)
ここまで歌詞を読み取っていくと
きみがパチスロをしている
という情景は
主人公に貢ぐため
だと読み取ることができる。
決してきみはギャンブル中毒だったわけではない。
だからきみは「なにがつらいの」と聞かれるほど辛酸たる表情でギャンブルに挑んでいるのです。
また「やめなきゃ負けない」というセリフも闇が深い。
本来なら台選びを慎重に行うことを、「打たなきゃ負けない」などの言葉で表しますが、本歌詞で描かれているのは「やめなきゃ負けない」になっている。
つまりどんなに負けたとしても「やり続ける限り負けはない」とそそのかしているのです。きみに破滅の未来が待っていても知ったことじゃないという姿勢が見受けられる。
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3番
鼻から吸わないで
ボーダーラインを引かないで
光る車に乗りたいなら電話してあげるよ
割れた画面よりもふたりの目だけが光る
しーっ 脱がすカルヴェン
ねぇ、こんなとこにピアス
とうとう二人の物語は結末へ。
ここで解釈が分かれるのが「鼻から吸わないで」という歌詞になると思いますが、主人公に追い込まれた君の行動を読み取ると「違法薬物」を鼻から吸っているさまを描いているのではないかという仮説が立つ。
怪奇的な行動を取るようになった君に対して「ボーダーラインをひかないで」と言っているのは「私から離れないで」と縋っているのではなく、『まだまだ搾取させて』という腹を秘めているのでしょう。
そうすると光る車は、パトカーを指していることも連鎖して見えてくる。主人公はいつでもきみを切り離す気でいるのだ。
最後の最後まで「脱がすカルヴェン」「こんなとこにピアス」と交じり合う情景が描かれていることに狂気を感じる。
ラストサビ
Black Love! Black Life!
Black Love! Black Life!
Black Love! Black Life!
歌詞で描かれていたのは圧倒的なダークな世界観。
まさに
Black Love! Black Life!
というサビの歌詞が表してるように、どこまでもブラックで混沌的な「Love」と「Life」が描かれていたのだ。
感想
まるで一つのダーク映画を見ているようでした。
イントロや曲感から想起される「狂気」を、歌詞の物語は軽々しく超えていったのではないかと思います。むしろ相乗効果でBlackな世界が強調されたといっても差し支えないでしょう。
ここまでのダーク、そして主人公のしたたかさにはある種の「カッコ良さ」すら感じさせられる。考察をすればするほど楽曲の沼にハマり込んでしまった。
ここまで強いブラックは女王蜂にしか出せなかっただろう。やはり女王蜂の楽曲は、中毒性がすごいなと改めて感じさせられた。
【女王蜂/BL】
歌詞の意味の解釈でした!(‘ω’)
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コメント
揃いのビニール袋は、おそらくシンナー吸うためですかね
男性同士を示唆してるような部分もいくつかあるし全体的にもそういうように取れるようにしてあると思うけどな。でも男性同士だとも男女だとも断言しない曖昧さがいい雰囲気なんだと思う、どうあれその2カ所のみで「これは男女」はさすがに短絡的過ぎないかな?
パチスロのくだりは主人公の財布から黙って金抜いてパチスロに行く「きみ」の罪悪感を利用して「きみ」を支配する主人公の姿が見えてくるように感じた。
はらだ先生を使ったのも作家性と歌詞がめちゃくちゃぴったりだなと思ったからそういうことかなと思った。他のBL作家だったら茶目っ気くらいだったと思うけど。
なんかもっとBLが好きになりました… ありがとうございます!!
自分もこの解釈だった。
金抜く罪悪感にビクビクしてる相手とニヤニヤしながら金を抜かれてる主人公。
隠れて金抜く(窃盗する)ほど負けてるんだからそこで辞めたら負け確定、やめない限り今後取り返せるかもしれないしそれがパチンコ中毒者脳。
この状況だとパチカスからは絶対離れて行かない、主人公次第の主従関係。
だから貢ぐためも違うかな、主人公は金なんて興味無さそう。精神的に服従や依存させて満足感を得てると思う。結局共依存っぽいけど。
このご時世に同性愛者が異質というのもアレだけど同性愛者の方が異質さに拍車かけるしオモシロイ。
はらだ先生の漫画の中身みたいな曲だと思う。
個人的にかなり面白い考察だなと思いました。めちゃくちゃ世界観に惹き込まれました。
想像力の乏しい私にとって、ここまで細かく読み取ってくれるのは本当にありがたいです。歌詞の深さに女王蜂愛が深まります。
ボーダーラインを引くってのは薬物をテーブルにライン上に引いて鼻から吸ってく情景意味してると思ってます。
皆さまの考察とても興味深いです。薬物に関すること、そしてBLが何を示しているのか。それぞれのコメントを主軸にして考えるとまた世界観が変わってきますね。面白い。
ポジティブな感想コメントもありがとうございます。励みになります。
あまりドラマを観ないもので、女王蜂の作品にこんな曲があるのを初めて知りました!
ボーダーラインというワードなのですが、精神疾患の一つに〝ボーダー〟と呼ばれる〝境界性人格障害〟と言うものがあります。ボーダーの一部の症状には、カジュアルセックスという、相手を問わず肉体関係を求めてしまう衝動もみられています。
薬物の摂取の仕方は、精神薬を粉状にして鼻から吸っているスニッフと言う行為に良く似ているので、合法なのか違法なのかキワどい感じがしますね。
ボーダーの人は稀に、医師や薬剤師から認可証を発行されないと貰えない精神薬を服用している事もあるので、主人公がそれを〝きみ〟に勝手に譲渡していたとしたらやはり違法ですが…