2番
あなたは弱音を吐いて
わたしは未練こぼして
最後くらい 神様でいさせて
だって これじゃ人間だわたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ 変わらず回るから
少し背中が軽くなった
2番のAメロでは、わたしにとってのあなたの大切さが痛切に伝わってきます。
わたしがいなくなることで、弱音を吐くあなた。そんな姿を見てしまったために「怖くはない 失うものなどない」と固めた強心が砕け散ってしまう。
はじめから人間は何も持っていないから後悔なんてする必要はない。と理屈では分かっていたのに、あなたのことになるとそうはいかなかった。唯一の未練がこぼれ出してしまう。
しかし自分のいないあなたを想像してみたら、意外にも世界はしっかり回っている。これはあなたの人生に対する関与が低いことを表しているのではなく「あなたならばわたしがいなくとも…」といったニュアンスが強いのでしょう。
また「わたしのいない世界を上から眺めていても…」なんて文面だけを見ると、わたしの死後の世界観が描かれているようにも感じますが、歌詞全体のストーリー的に実際に亡くなっている訳ではなく、上記で述べたように「想像してみた」に尽きるのだと思います。
それじゃ それじゃ またね
国道沿い前で別れ
続く町の喧騒 後目に一人行く
ください ください ばっかで
何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま
2番のBメロも1番のBメロと同様に、わたしとあなたの特有のストーリーを想像させる内容になっています。
具体的な情景は歌詞の通りなのですが「ください ください ばっかで 何も あげられなかったね」という後悔だったり、無力感だったり、求める姿勢だったり、の情景だけは特に押さえておいてください。
この卑屈な感情はラストサビでプラス方向へ全転換されます。これが心に響く。美しい。
ラストサビ
ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう、って胸をはろう
待ってるからさ、もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所、帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に 忘れようあぁ今日からどう生きてこう
ラストサビは、死期を前にしたわたしの心の寛大さや、人生そのものの解釈の素敵さがもの凄くグッとくる内容になっています。
個人的にここの歌詞でフォーカスを当てたいのは、名言その2とも言えるこの部分。
ここは本当に納得できますし、2番Bメロで「与えられてばかりの人生」に卑屈を感じていた主人公を見ていただけあって、この逆転の解釈には余計胸がアツくなります。
くださいくださいばかりの人生は、他人の役に立っていない人生なんかではなく、言い換えれば他人に与えられるものが多い人生だったのです。
だからわたしは、大切なあなたに「全て与えて帰ろう」とする。わたしの人生に意味はあった。もはや未練なんてこれっぽちもないのです。
藤井風が圧倒的なスケールで描く「帰ろう」は、文字通り「天に帰ろう」とする主人公が、無に帰ろうと思うまでの素晴らしすぎる心情変化が描かれていたのです。
ラストが「あぁ今日からどう生きてこう」で締められるのも奥ゆかしいですよね。きれいさっぱり人生を精算したわたしは次の旅に足を運ばせていくのです。
感想
改めて歌詞が良すぎる、藤井風の帰ろう。
「帰ろう」というタイトルだけを把握していたときは、ここまでストーリーや、美しい表現が濃密に詰められているとは思いもしませんでした。毎度期待の遥か上をいってくれる。
思い返せば筆者の人生も与えられることの多い人生。
まさに、くださいくださいばかりの人生なのですが「与えられるものこそ与えられたもの」という言葉を思い出して、ギブの精神を持って他者と関わっていきたいなと感じさせられました。素敵な気持ちにさせてくれて感謝です。
【藤井風/帰ろう】
歌詞の意味の解釈でした!
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コメント
すごいです…
この記事は本当に伸びて欲しいです。
tさんコメントありがとうございます。
メッセージ性が深すぎてたくさんの方に聴いて頂きたい、そして見て頂きたい作品です。
すごくわかりやすい解説でした。
自分の中でぼんやりと思っていたこと
きれいに文章にしていただいてありがとうございます。
とてもしっくりきました。
まっつんさんコメントありがとうございます。
私自身もかなり好きな楽曲で、想いを込めながら記事を執筆させて頂きました。
しっくりきたとのこと、すごく嬉しく思います!
つい最近 初めて聴きましたが、知らずと涙が溢れました。今改めてこの解釈を読んで意味を知り、また泣きました。こんなに深い詞だったんですね。
ありがとうございました。