花譜1st ALBUM「観測」の収録曲。
【花譜×カンザキイオリ】の
「過去を喰らう」について
歌詞の意味を徹底的に
考察および解説していきたいと思います。
これまた感慨深い歌詞になっています。
是非、最後までご覧ください。
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楽曲の基本情報
冒頭でも述べましたが、今回紹介する「過去を喰らう」は、花譜の第1弾アルバム「観測」の収録曲。このアルバムの完成度が非常に高いのですが、実は全曲の作詞・作曲・編曲を「命に嫌われている」「あの夏が飽和する」などの人気楽曲を手掛けたとして有名な、ボカロP「カンザキイオリ」さんが担当しているのです。
個人的に、カンザキイオリさんの作る音楽が、全てにおいてグサグサ刺さってきます。ソングライターとしての能力が非常に高いのです。特に歌詞のメッセージ性という部門において、彼以上の人はいないかも知れない。
また、圧倒的な映像美を誇るMVは、ヨルシカの「心に穴が空いた」などのディレクターを努めた、映像クリエイターの「川サキゲンジ」が担当しています。
- 花譜の歌唱力
- カンザキイオリの音楽
- 川サキゲンジの映像
これらの化学反応が、かつてない至高の世界観を作り出しているのです。
またカンザキイオリは本楽曲について
いつもより、歌詞をカンザキイオリに寄せさせていただいて作ったので、
曲の中に泥臭さや、後悔とか、ひねくれた期待が、花譜ちゃんを通して沢山の人に伝われば嬉しいです。ぜひ聞いてみてください。
よろしくおねがいします。 https://t.co/feMcgYIe74— カンザキイオリ (@kurogaki0311) June 5, 2019
と、コメントしています。
楽曲に対する期待感が高まりますね。
では、楽曲考察に移っていきます。
楽曲名「過去を喰らう」とは
「過去を喰らう」という言葉は
本来存在しませんが
意味を持たせるとするならば
過去を淘汰する。
過去をリセットする。
といったものになるのでしょう。歌詞の解釈を行うことで、何となく腑に落ちてくると思います。
また、タイトルからも容易に連想できますが
本楽曲のテーマは
「現在と過去」
といったところ。
この楽曲名が歌詞の内容と
どう関与しているのでしょうか。
歌詞
愛した理由も忘れちゃって
過食気味の胸で泣いちゃって
肌の色すら 見えなくなっている
自分だけ傷づいたつもりで
悪いのは誰かだと思って
足が抜け落ちたのも 気づかない夢や希望はなんだった?
やりたいことはこれだった?
過去が僕らを待っている
貪欲な顔で待っている侘しさも 悲しみもなければ
夜が死ぬたび 歌なんて歌わなかったあなたの笑顔がここにあるなら
諦めなんてしなかったんだ
あなたの言葉を思い出すから
慰めなんていらなかった
生きる意味ばかり思い出すから
優しさを常に疑った
あなたの涙を見て笑えたら
今更恥など知らなかったウグイスが鳴いて
破り捨てた卒業証書が
夜空になって舞ってった
過去を喰らい尽くした反抗期だと疎まれた
子供たちは復讐に走り
意味にすがる腑抜けた大人たちは
歌を歌いたがる若さを強いて貪る惰眠
気づけば爪が剥がれ落ちる
雨が好きだった理由も
好きな歌も忘れ去った
心に響くのは物ばかり
それなのに人が恋しくって
あなたへの気持ちだけ
今も終わらないんだ例えば僕らが街で出会って
夢のような話を紡げたら
あなたと僕は笑えるだろうか
画面の中であなたに会えたら
思い出すのは後悔ばかりだ
今でも愛しいよ あの頃に今も戻りたいよこんな大人で我慢できたら
苦しみなんて知らなかった
言葉ですべて解決するなら
ここまで涙は出なかった
あなたが頭で渦を巻くから
今もこの朝が嫌いだった
大人になるのが怖かった
強くなることが怖かったウグイスが鳴いて
ゴミになった制服が
夜空になって舞ってった
過去を喰らい尽くした作詞作曲:カンザキイオリ
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歌詞の意味・解釈
1番
愛した理由も忘れちゃって
過食気味の胸で泣いちゃって
肌の色すら 見えなくなっている
自分だけ傷づいたつもりで
悪いのは誰かだと思って
足が抜け落ちたのも 気づかない
本楽曲を考察するにあたって、はじめに伝えておきたいことが1つ。
それは、
本楽曲は一貫して自分と向き合っている
ということです。
これがどういうことなのかと言いますと、歌詞では「愛した理由も」や「あなたの笑顔がここにあるなら」、「人が恋しくて」など、まるでラブソングのような語法が展開されていくのですが、“そうではない”と言いたいわけです。
では、前置きはこのくらいにして、歌詞に焦点を当てていきましょう。
まず、過食気味の胸という言葉があるのですが、これは「胸がいっぱいいっぱいになっている」→「胸が張り裂けそうになっている」という、鬱にも近い主人公の心情をそのまま映し出しています。
ここまで追い込まれている理由は、
次の歌詞フレーズで明らかになる。
夢や希望はなんだった?
やりたいことはこれだった?
過去が僕らを待っている
貪欲な顔で待っている
暗い心境の理由が明らかになりましたね。
現状の自分×過去の自分
そのギャップに葛藤しているのです。
さしずめ、
過去の自分は夢や希望に満ちていた
のでしょう。
キラキラしていた頃の自分が、平凡的になり過ぎた自分を見て、変わることを待ち望んでいるのです。ものすごく貪欲な表情で。
夢を持ち直したいと想っているから、このような現象に陥っているのでしょう。現状に飽き飽きしているのは、主人公なのですから。
一つ前の歌詞フレーズに、足抜けという言葉がありましたが、この言葉が使われていたことにも、ちゃんと意図があります。
本来、足抜けとは
芸妓や娼妓などが前借り金を清算しないで逃げること。
という意味を持ちます。
未清算で逃げる本来の意味と
夢を捨てて逃げた現在の自分
を対比して使われていたのです。
やはり言葉の使い方が秀逸的すぎる。
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侘しさも 悲しみもなければ
夜が死ぬたび 歌なんて歌わなかった
ここで描かれているのは
夢や希望に溢れていた自分から、
堕落した自分になるまでの過程。
平凡的な夜を越えるたびに、確実に夢は遠ざかっていったはずなのに、侘しさや悲しみは全くもって感じなかったのです。今の自分を卑下している分、かなり皮肉的な歌詞になっています。
人間、ゆっくりと進行する危機や環境変化に対応するのは、非常に難しいものですからね。
サビ1
あなたの笑顔がここにあるなら
諦めなんてしなかったんだ
あなたの言葉を思い出すから
慰めなんていらなかった
生きる意味ばかり思い出すから
優しさを常に疑った
あなたの涙を見て笑えたら
今更恥など知らなかった
ここのサビの解釈が重要。
特に「あなた」という言葉。
この捉え方一つで、本楽曲はラブソングにも自己啓発ソングにも様変わりしていきます。ただ本楽曲の前提でお話ししたように、あくまでも自分と向き合っている楽曲です。
そう考えると1つの仮説が生まれます。
あなた=夢や希望に溢れていた頃の自分
という方程式です。
安易に、“想いを寄せていたあなた”だと仮定すると、ピントが合わない場面が生まれてくるのですが、こう解釈できると全ての場面にピントが合い、歌詞にも一貫性が出てきます。
この解釈で今一度、歌詞のテキストを見直してみてください。見え方が変わってきませんか?
- 過去の自分の笑顔
- 過去の自分の言葉
- 過去の自分の涙
それら全てが、夢や希望に起因するもので、今ではその時代の自分そのものが「憧れ」に変わっているのでしょう。
ウグイスが鳴いて
破り捨てた卒業証書が
夜空になって舞ってった
過去を喰らい尽くした
ここで今を悔やむ主人公の背景が分かる。
それは「卒業」というタイミングであること。
平々たる毎日の中では考えることもしなかったのに、卒業という人生の節目にきて、ようやく過去とのギャップを感じ始めたのです。しかも急激に。
だから嫌になって
卒業証書を破り捨てる
という、暴挙に出たのです。
まるで、過去から今に至るまで、体たらくを繰り返してしまった自分をリセットする(過去を喰らう)ように。
今後どのように歌詞が展開されていくのでしょうか。
2番に移ります。
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コメント
卒業…
これはオリジナルのほうの哀伝ティティにつながりますね…
侘しさも 悲しみもなければ
について、これらを全くもって感じなかったとありますが、
この歌詞は実際には侘しさも悲しみもあるということではないですか?
確かにそう取れますね。というより改めて歌詞と向き合うと、むしろそうであると感じました。
いかんせん花譜さんの「歌なんて歌わなかった」のインパクトが強くて、直感的に否定系で合わせてしまった所存です。
そう仮定すると、
夢を捨てようとしたけど捨てきれなかった。だから夜には歌を歌ってしまっていた。
となるわけですね。一連の流れと合わせて解釈してもしっくりきますね。
コメントありがとうございました^ ^
喰らうって言葉はリセットというよりか糧にするというイメージの方がしっくりくる気がします