アルバム「CEREMONY」の中で異彩を放つ。
【King Gnu(キングヌー)】の
「壇上」について
歌詞の意味を徹底的に
考察および解説していきたいと思います。
この楽曲、想いの密度が凄いです。
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楽曲の基本情報
今回紹介していく「壇上」は、King Gnuのアルバム「CEREMONY」の最後に(閉会式を除くと)収録されているナンバー。
King Gnuの作詞作曲を担当するギターの常田さんがメインボーカルとして歌い上げる本楽曲は、常田さん自身の音楽に対する想いが凝縮されています。アルバム全体を見ても「壇上」は異質な存在感を放っていると感じた方は多いのではないでしょうか。
常田さんの楽曲へのコメントは以下。
作り方もそうですけど、やっぱり、タイアップも含めて、求められるテンプレートみたいな形ができてきていたんですよね。昔はもっと自由に「ああでもない、こうでもない」とやっていたものが、去年はどんどん工場生産のようになっていった。スケジュールも時間もない中で、合理的に、クオリティを担保できるやり方をとらなきゃいけなかった。だからもう1回「壇上」みたいな作り方に回帰しなきゃいけなかったんです。
そういう意味ではけっこう2019年はしんどかった。俺だけじゃないと思うんですけど、ルーティンとかテンプレートに縛られて、気持ち悪さを感じていたので。でも、いい区切りになったアルバムだと思います。でも、それは来年からアンダーグラウンドに回帰するという話じゃまったくなく。何を作るにおいても、クラシックになりうるポップスを作るという心構えはやっぱり重要というか、そのスタンスは守らなきゃいけないなと思っているので。そういう意味でのいい区切りになるアルバムだと思います。
確かにアルバム「CEREMONY」の大半はタイアップ曲。
King Gnuの勢いが凄すぎる。
・白日→ ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』主題歌
・飛行艇→ANA CMソング
・傘→アルフォート CMソング
・Teenager Forever→SONY CMソング
・小さな惑星→HONDA CMソング
・ユーモア→「ロマサガ」CMソング
・どろん→映画「スマホ2」主題歌CEREMONYの提携率が驚異的 pic.twitter.com/0nGkqlak6R
— サルー🎧脳MUSIC 脳LIFE (@saluteproject) December 12, 2019
1ファンとしてはキングヌーの活躍っぷりに、ただただ喜んでいたのですが、この連続タイアップが逆にKing Gnuらしさを失わせていたわけです。
確かに「CEREMONY」の収録曲はキャッチーで歌謡曲感が強い。特にKing Gnu名義での初アルバム「Tokyo Rendez-Vous」と聴き比べるとそれは顕著に分かります。
人気が出るにつれて、音楽としての在り方に「窮屈」を感じていたわけですね。その結果生まれた楽曲が「壇上」だったと。
楽曲を聴くだけでも漠然と伝わる「強い意志」と「メッセージ性」は、ここに由来していたのです。
それでは楽曲背景を押さえたうえで本題の楽曲考察に移っていきましょう。
楽曲名「壇上」とは
「壇上」とは
教壇、演壇といった壇の上。
を示す意味の言葉になっています。
楽曲の基本情報の欄で述べたように「壇上」は常田さんがKing Gnuとしての活動に窮屈さを感じていたときに作成した楽曲になります。また何でも「King Gnuを解散したいぐらい追い詰められてた時に書いた」とのこと。
そんな逆境の中で語りかけていく詞だからこそ「しっかり壇上に立って意思表明をしたい」ということで、本楽曲のタイトル名に繋がったのではないかと筆者は考えています。
実際に歌詞を細かく見ていきましょう。
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歌詞
叶いやしない
願いばかりが積もっていく
大人になったんだな
ピアノの音でさえ胸に染みるぜ君はすっかり
変わってしまったけど
俺はまだここにずっといるんだ
汚れた部屋だけを残してちっぽけな夢に囚われたままで
売り払う魂も残っちゃいないけど
君のすべては俺のすべてさ
なんて言葉は過去のもの
今ならこの身さえ差し出すよ何も知らなかった自分を
羨ましく思うかい?
君を失望させてまで
欲しがったのは何故
何もかもを手に入れた
つもりでいたけど
もう十分でしょう
もう終わりにしよう目に見えるものなんて
世界のほんの一部でしかないんだ
今ならそう思えるよ本当に泣きたい時に限って
誰も気づいちゃくれないよな
人知れず涙を流す日もある履きなれた靴で出かけよう
靴音を高らかに響かせながら
決して足跡を消さないで
いつでも辿れば
君の元に帰れるようにそばにいて欲しいんだ、どんな未来でも
譲れぬものだけを胸に歩いていくんだ
自分の身の丈を知り、それでも
背けずに見つめられるかい?
骨までずぶ濡れの明日さえも
信じられるかい?最終列車はもう行ってしまったけれど
この真夜中を一緒に歩いてくれるかい?
何時間かかってもいいんだ
ゆっくりでいい
この足跡を辿って
確かな足取りで帰ろうよ何も知らなかった自分を
羨ましく思うかい?
君を失望させてまで
欲しがったのは何故
何もかもを手に入れた
つもりでいたけど
もう十分でしょう
もう終わりにしようかそばにいて欲しいんだ、どんな未来でも
譲れぬものだけを胸に歩いていくんだ
自分の身の丈を知り、それでも
背けずに見つめられるかい?
骨までずぶ濡れの明日さえも
信じられるかい?叶いやしない
願いばかりが積もっていく
大人になったんだな
ピアノの音でさえ胸に染みるぜ君はすっかり
変わってしまったけど
俺はまだここにずっといるんだ
汚れた部屋だけを残して作詞作曲:常田大希
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歌詞の意味・解釈
1番
叶いやしない
願いばかりが積もっていく
大人になったんだな
ピアノの音でさえ胸に染みるぜ
まず冒頭部分の歌詞から伺えるのは
圧倒的な後ろめたさと傷心です。
「あれがしたかった」「これがしたかった」と、どんなに後悔しても時間は淡々と過ぎていく。とはいえ後悔ばかりの人生は、過去の自分が自ら選択したことで成り立っているものだから「胸に染みるぜ」と受け入れるしかないのです。
主人公は過去に悔やんで傷心している。
君はすっかり
変わってしまったけど
俺はまだここにずっといるんだ
汚れた部屋だけを残して
ここで「君」が登場します。
なお、恋愛ソングのような語法で歌詞が綴られていますが、本楽曲はただの恋愛ソングではありません。楽曲の基本情報の欄で述べたように「万人受けるKing Gnu」を作るが故に窮屈さを感じた常田さんが想いを歌に変換したものです。
そのため歌詞中の「君」は恋愛相手の君としてではなく、昔の音楽が好きだった君として置き換えると解釈の解像度がググっと上がると思います。
これらを踏まえたうえで上記の歌詞を見ると、「君はすっかり変わってしまった」というのは、自らの音楽性が変わってしまったために、見向きもしてくれなくなった様子を表しており、遠まわしに「寂しさ」を演出していることが分かる。深い。
そして「汚れた部屋だけを残して」という歌詞は、もっと深くて切ない。汚れた部屋というのは言い換えれば「昔の音楽」そのものであり、「外から見たら変わってしまったかもしれないけど、内に宿っているものは変わっていないよ」という意志が表れた一文になります。
ほんとに想いが凝縮されていますね。
ちっぽけな夢に囚われたままで
売り払う魂も残っちゃいないけど
君のすべては俺のすべてさ
なんて言葉は過去のもの
今ならこの身さえ差し出すよ
魂を売る…人が金品や地位を得るために、道を踏み外すこと。
音楽のテンプレートに従った自分を悔いているから「売り払う魂も残っちゃいない」と嘆きをこぼしている。だが本心では昔の音楽を愛してくれた君に寄り添いたいと思っている。
今ならこの身さえ差し出すよ
と言っても大袈裟ではないくらい、過去の自分が形成していった今の自分を悔やんでいるのです。
サビ1
何も知らなかった自分を
羨ましく思うかい?
君を失望させてまで
欲しがったのは何故
何もかもを手に入れた
つもりでいたけど
もう十分でしょう
もう終わりにしよう
かなり衝撃的なサビ。
何もかもを手に入れたつもりでいたけど
もう十分でしょうもう終わりにしよう
特にこの部分はファンの間で「え?King Gnu解散するの?」という話題が出たくらい意味深な歌詞になっている。
実はここの歌詞については常田さんが
King Gnuを「紅白」を最後に解散したいなと思って書き始めたら、すぐできました。
とインタビューコメントを残しています。
実際に解散するわけではないのですが、楽曲タイトルの考察欄で述べた「King Gnuを解散したいぐらい追い詰められてた時に書いた」という常田さんの心境は、歌詞にも顕著に表れていたということです。
はじめ本当に解散するかと思ってヒヤッとしました。ここで解散したら紛れもなく「伝説」にはなりそうでしたが。
2番ではさらに後悔が綴られていくのですが、3番では「決意」の芽が出てきます。
さらに歌詞を追っていきましょう。
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