2番
転がした車窓と情景 動機は未だ不明
邪魔臭くて苛ついて 迷い込んだニャンニャンニャン
ここいらで落とした財布 誰か見ませんでした?
馬鹿みたいについてないね 茶化してくれハイウェイ・スター
2番冒頭ではサビでヒートアップした歌詞の展開が一旦落ち着き、再び世の中への漠然としたやるせなさが描かれています。
ドラマ的に言えば事件の真相にたどり着けず行き先を見失い、さらに不幸にまで見舞われて踏んだり蹴ったりな状況。
現状を打破できず、鬱屈とした時間を過ごしています。
よう相棒 もう一丁 漫画みたいな喧嘩しようよ
酒落になんないくらいのやつを お試しで
正論と 暴論の 分類さえ出来やしない街を
抜け出して互いに笑い合う
目指すのは メロウなエンディング
この部分の歌詞でも、これまでの米津さんの同テーマの楽曲からの大きな変化を感じます。
これまでの楽曲では、先に述べた通りあくまで主人公の生き方は享楽的なものでした。
今の世の中とは関わりたくないから、俺は行く当ても無く彷徨う。ハンドルを手放してアクセルを踏み込む。
そこでは目的地なんかあるはずもなく、晴耕雨読で自分勝手に、ただ「今の現状を離れて楽しむこと」だけが目的だったと考えることができます。
しかし『感電』には、「メロウなエンディング」という明瞭なゴールが設定されています。
「メロウ」とは、「物事が円熟している様子」のこと。メロウな結末にたどり着くためには、洒落にならないくらいの喧嘩になってでも人生を共にする人と感情をぶつけあうことが必要不可欠でしょう。
これまで交わることのなかった、他人と関わり合うことによって生まれる「愛」と、「おかしな世の中からの乖離」。
『感電』の歌詞ではそれらが見事に混じり合い、新たな世界観を創出しています。
本人が「ここ数年、人に生かされていると思うことがすごく増えた」といったことを語っているように、社交的になった、なんて言い方をすると大変失礼な話ですが、自分以外の人間との関りをより意識するようになった米津さんのスタンスが曲に投影されているのです。
サビ2
それは心臓を 刹那に揺らすもの
追いかけた途端に 見失っちゃうの
きっと永遠が どっかにあるんだと
明後日を 探し回るのも 悪くはないでしょうお前がどっかに消えた朝より
こんな夜の方が まだましさ
心臓を刹那に揺らすもの。
それはきっと、先ほど述べた「愛」とか「絆」とかの不確かな感情でしょう。
狂った世の中に別れを告げ、不確かな「愛」「絆」「友情」「永遠」を追いかける。
例え夜が明けたとしても、そこにお前がいないのならば、俺はこんな夜の方がましさ。
ただ世の中から離れることだけに飽き足らず、目に見えないものを追求しメロウなエンディングを求めるようになった米津玄師。
過去にはあまり積極的には歌われなかった「愛」が曲に取り入れられたことで間違いなく、彼の描く世界は明るいものへと変化しつつあります。
3番
肺に睡蓮 遠くのサイレン
響き合う境界線
愛し合う様に 喧嘩しようぜ
遺る瀬無さ引っさげて
「肺に睡蓮」というのはフランスの小説『うたかたの日々』からの引用で、肺に睡蓮の蕾ができ、やがて人を死に至らしめるという架空の病気のことを表しています。
肺に睡蓮ができるというのはつまるところ、死期が迫ってきているということです。
また「遠くのサイレン」という言葉からは、警察沙汰が起こっている様子が目に浮かびます。
これらが響き合う境界線というのは、「死と狂った世の中が共存する場所」。つまりは自分が今置かれている境遇を示しているのではないでしょうか。
そんなやるせない世界で、愛し合うように喧嘩して稲妻の様に生きていく。
米津さんの描く新境地が垣間見える一曲でした…!
感想
米津玄師楽曲の通年のテーマの一つである、「おかしな世の中からの乖離」。
そんな彼の乖離願望が、この楽曲ではこれまでと比べ、遥かに健全な形で姿を現しています。
正論と暴論の分類さえできない狂った街と明けない夜。
それでも彼はただ漠然と息をするのではなく、心臓を刹那に揺らすものを追いかけてエンジンをふかし始めました。
それは決して独りよがりのものではありません。曲のタイトルは「感電」。
他の誰かとの交流の中で傷つけあったりしながらも、周囲を旅に巻き込みながら美しいものを追い求めて、彼は夜道を突き進みます。
「感電」。
世の中がどうあろうと、俺は我が道を行く。
「お前はどうしたい? 返事はいらない」
これは間違いなく、少しずつ明るい曲を描くようになった米津玄師の新たな一歩なのです。
【米津玄師/感電】
歌詞の意味の解釈でした!
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コメント
もう少し単純な文で書いて頂きたい。
でも、気になってた事が解決して良かったです。ありがとうございます!
コメントありがとうございます!
今回の記事は特に煩雑になってしまっているので以後気をつけますm(__)m
今回も、興味深く拝見しました。
確かに、最近の米津さんの歌詞は明るい方へ向かっているような気がしますね。
Neighbourhoodで、反吐が出ると言っていた家族の風景も、カイトで、なんというか昇華されたような気がして、
私まで救われました。
心臓を刹那に揺らすものと言うフレーズが印象的ですが、胸がキュンとしたりドキッとしたりすると言う意味でしょうか?
米津さんの歌詞は深くて、色々考えるのが楽しいです。
コメントありがとうございます…!
聴いた人に希望をあたられる曲を作るのが音楽家の役割だ…といったことを最近よく話されているので、意図的に明るい方に舵を切っているのかもしれませんね。
「心臓を刹那に揺らすもの」は恐らくそういった意味合いで、興奮とか感動とか恋とかを言ってるのかな…という感じがしています。
言葉のチョイスが面白いですよね…