2番
会っても癒えない世界で
匿名の自分になって
誰を批判しなくたって
発散できる言葉探してる
Hip hopけって
濃いめの愛闇(アイシャドウ)拭って
誰を批判しなくたって
発散できるファッション探してる
サビの歌詞では「自分の尺度で自分らしく生きられればそれでいい」といったことが歌われていました。
自分らしく生きるということは、言い換えれば他人の自分らしさを否定しない事でもあります。
2番冒頭では、匿名で何でも言えてしまうこの世の中で、誰かを傷つけることなくストレスを発散する方法を探しています。
思えば昨今はTV番組も誰も傷つけない面白さが求めらていますし、様々なハラスメントも糾弾される世の中です。《誰を批判しなくたって発散できる》方法を見つけることは、現代人共通の課題でしょう。
またACAねさん自身も言ってしまえば、匿名で顔を出さずに活動をしている極めて現代的なミュージシャンの一人です。加えて彼女はHip hopのように、楽曲の中でよくラップ調でバースを蹴っています。
この部分の歌詞はシンプルに、彼女自身のことを歌っているのかもしれません。
どんな名言も響かない僕から
何も生まれはしないけど
目に見える世界が全てじゃないって
わかりたかっただけ
多分人様の基準に従って生きているわけではない ”僕” には、世間で知られているどんな名言も響かないのかもしれません。
誰かにとっては正しくない生き方をしている自分は、誰かにとって非生産的な存在なのでしょう。
でも自分は自分の尺度で生きていて、目に見える世界が全てではないとわかりたくて身勝手に生きています。
「そんな生き方でもいいんだよ」とそっと教えてくれるのが、この曲の素晴らしさです。
サビ2
(中略)
誰かを けなして自分は真っ当
前後を削った一言だけを
集団攻撃 小さな誤解が命取り
あんたは僕の何なんだ
そんなやつに心引き裂かれたんだ
想像は想像でしかないし
粘り強いけれど打たれ弱いし
心臓を競走する前に
サビの前半の歌詞は1番同様なので考察は割愛させていただきます。
このパートでは、ラップ調で現代のネット社会の様子を軽快に描き出しています。ずとまよ楽曲にしては歌詞の描写が具体的なのがちょっとシリアスですね。
発言の一部分だけを切り取って、集団でよってかかって誰かをけなす昨今の風潮。
さも自分は何も間違えていなくて、相手だけが何もかも間違えているかのようです。
《あんたは僕の何なんだ そんなやつに心引き裂かれたんだ》
誰だって粘り強いだけで打たれ弱い。メンタルの強さを競争してる暇なんてない。
みんな自分らしく生きられればそれでいいんだから、他人にとやかく言うなんてもってのほかです。
《どうでもいいから置いてった あいつら全員同窓会》というキャッチーな言葉の裏には、そうやって他人のことを知りもしないのに口を出したがる風潮に対する皮肉も込められているのかもしれません。
どうでもいいじゃんそんなの、と。
ラスサビ
お疲れ様です 風邪気味です
冗談なのか本心なのか わからなすぎ問題
了解も災害も 大嫌い
夜道歩き 孤独に浸ったり
変なパジャマの人と目が合ったり
それだけの時間を増やしたい
それでも夜道は風邪ひくよ
アウトロの歌詞もまた軽快で巧妙なラップ調です。
この部分で歌われていることも、これまで同様「自分の尺度で自分らしく生きたい」ということ。
だけどそれを《夜道歩き 孤独に浸ったり 変なパジャマの人と目が合ったり それだけの時間を増やしたい》という独特だけれどもなんかちょっとわかる例え話で表現してしまうのがACAねさんの恐ろしいところです。
テーマはそういうことなのだけど、その伝え方がめちゃくちゃ個性的で最後まで飽きさせません。
さらに一見関係ない歌詞ではありますが、ラップ冒頭で《お疲れ様です 風邪気味です》と自身の体調を告白しておいて、あの歌詞なんだったのかな…なんてことを思っていたころに《それでも夜道は風邪ひくよ》と。
つまり夜道を歩いていたせいで風邪をひいてしまった、というストーリーが一応あるわけです。
ACAね節ともいえるこの独特な思考の言語化はずとまよの代名詞でしょう。
人の ダメなとこばっか 見つけて
指摘して、自分棚に上げすぎ
心と体終わってく
こんな自分そんな身分じゃない
言い切れることはない
いい切れたことは自分に言い聞かせてること
また笑い転げられるのさ あばらの骨が折れるまで
最後の歌詞では再び、他人の人生に口を出すべきではないのだと繰り返されます。
他人を否定できるほど自分は立派な人間じゃない。
他人の生き方に口なんか出さず、自分とだけちゃんと向き合って生きていければ、きっとあばらが折れるくらい笑って楽しく生きていけるはず。
「NO BORDER. キミにしかなれない、キミがいる。」というコンセプトのもとに制作された今回の楽曲。
独特の言語感覚で自分らしく生きること、他人の自分らしさを否定しないことを歌った、ACAねさんらしい一曲でした。
【ずっと真夜中でいいのに。/あいつら全員同窓会】
歌詞の意味の解釈でした!
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コメント
かなり深いところまで考察されていて、しかも論理的に矛盾や飛躍がなくて、
ACAねさんの立場に立った解説で他のどの考察記事よりもわかりやすかったです。
実におもしろい。