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【ヨルシカ/春泥棒】歌詞の意味を徹底解釈!桜を命に見立てた、物語『盗作』最終章。

【ヨルシカ】「春泥棒」について、歌詞の意味を徹底的に考察および解説していきたいと思います。

 

注目ポイント

✔ アルバム『盗作』との関係性

✔ 美しすぎる桜吹雪の描写

✔ 古典文学的な言葉遣い

 

骨助
骨助

桜を命に、風を時間に見立てた美しい一曲。歌詞をじっくりと考察していきます…!

 

 

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EP「創作」収録曲

今回紹介していく「春泥棒」は、“春”をテーマに制作されたというEP「創作」に収録される一曲。

大成建設CMソングとしてもオンエアされており、2021年1月9日には先行リリースおよびMVの公開がスタートしています。

 

楽曲について作詞のn-bunaさんは自身のTwitterアカウントにて、

春の日に昭和記念公園の原に一本立つ欅を眺めながら、あの欅が桜だったらいいのにと考えていた。あれを桜に見立てて曲を書こう。どうせならその桜も何かに見立てた方がいい。月並みだが命にしよう。花が寿命なら風は時間だろう。
それはつまり春風のことで、桜を散らしていくから春泥棒である。

とコメントされています。

 

MVを見ると明らかなのですが、「春泥棒」は昨年発売のアルバム『盗作』の物語と密接にリンクした楽曲。

このコメントも常体(だ・である)で記されていることから、n-bunaさんというよりは『盗作』の主人公によるものと考えた方が自然でしょう。

 

桜を命に、風を時間に見立てて描かれた春の一曲。

 

骨助
骨助

一体何を歌っているのか、歌詞を見ながら考察していきます…!

アルバム『盗作』との繋がり

コンセプトを重視して楽曲制作を行うヨルシカ。

この楽曲も、2020年発売のアルバム『盗作』の物語に基づいた内容になっているように思います。

 

アルバム『盗作』は、全14曲を通して “音楽の盗作をする男の物語”  を描いた作品です。

作品中において主人公である男は “盗作という破壊衝動” をひたすらに歌にしていくのですが、その晩年には自身の活動に虚しさを覚え、美しい若き日の思い出に耽るようになります。

今回の楽曲も ”盗作” について触れられることは一切なく、歌われているのは美しい春の景色だけ

 

『盗作』収録の「逃亡」「夜行」「花に亡霊」、そして今回のEP『創作』収録の「春泥棒」「嘘月」

過去を懐かしみ思い出を追いかける、『盗作』晩期の楽曲群のうちの一曲であると言えるでしょう。

 

若干『盗作』の物語のネタバレになってしまいますが、主人公は若い頃に妻を亡くしています

そして詳しくは説明しませんが、彼が盗作を始めることとなった一因はこの最愛の妻の死にあります。

 

MVや歌詞を見るに今回の楽曲は、どうやらそんな妻と過ごした美しい時間を歌った楽曲である様です。

 

骨助
骨助

ここまで確認したところで、さっそく本題の歌詞を見ていきましょう。

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歌詞

高架橋を抜けたら雲の隙間に青が覗いた
最近どうも暑いからただ風が吹くのを待ってた

木陰に座る
何か頬に付く
見上げれば頭上に咲いて散る

はらり、僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
さぁ、今日さえ明日過去に変わる
ただ風を待つ
だから僕らもう声も忘れて
さよならさえ億劫
ただ花が降るだけ晴れり
今、春吹雪

次の日も待ち合わせ
花見の客も少なくなった
春の匂いはもう止む
今年も夏が来るのか

高架橋を抜けたら道の先に君が覗いた
残りはどれだけかな
どれだけ春に会えるだろう

川沿いの丘、木陰に座る
また昨日と変わらず今日も咲く花に、

僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
花散らせ今吹くこの嵐は
まさに春泥棒
風に今日ももう時が流れて
立つことさえ億劫
花の隙間に空、散れり
まだ、春吹雪

今日も会いに行く
木陰に座る
溜息を吐く
花ももう終わる
明日も会いに行く
春がもう終わる
名残るように時間が散っていく

愛を歌えば言葉足らず
踏む韻さえ億劫
花開いた今を言葉如きが語れるものか

はらり、僕らもう声も忘れて
瞬きさえ億劫
花見は僕らだけ
散るなまだ、春吹雪

あともう少しだけ
もう数えられるだけ
あと花二つだけ
もう花一つだけ

ただ葉が残るだけ、はらり
今、春仕舞い

 

作詞:n-buna

歌詞の意味・解釈

1番

高架橋を抜けたら雲の隙間に青が覗いた
最近どうも暑いからただ風が吹くのを待ってた

木陰に座る
何か頬に付く
見上げれば頭上に咲いて散る

麗らかな春の陽気を感じられるような情景描写から楽曲はスタートします。

冬が終わり、少し汗ばむ程度に気温が上がり始めて、風が吹けば心地よく感じられるようなあの季節。

日本の四季の美しさを歌わせれば、ヨルシカの右に出るものはそういないでしょう。

 

さて、ここで果たしてこの景色が現在主人公が見ている景色なのか、というのを少し考えてみるのですが、残念ながらどうやらそうではありません。

n-bunaさんのTwitter上でのコメントに「春の日に昭和記念公園の原に一本立つ欅を眺めながら、あの欅が桜だったらいいのにと考えていた。あれを桜に見立てて曲を書こう。」というものがありました。

この曲は『盗作』の主人公が、欅の木に桜を重ねて歌った楽曲。

春の情景は主人公が今見ているものではなく、思い出の中の景色です。

 

「どうせならその桜も何かに見立てた方がいい。月並みだが命にしよう。」

「春泥棒」は桜を命に見立てた楽曲なのですが、この時点での主人公はとりわけ桜の存在を意識していません。

《何か頬に付く 見上げれば頭上に咲いて散る》

言ってしまえば、「あ、桜咲いてたんだ」くらいの感覚。桜を命に見立てるのならば、まだ命の美しさを意識していない状況にあると言えます。

 

この次の歌詞を見るとわかりますが、この時点では思い出の中の妻は元気に生きているようなので、まだ命が少しずつ散っていっていることを意識していないのです。

 

サビ1

はらり、僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
さぁ、今日さえ明日過去に変わる
ただ風を待つ
だから僕らもう声も忘れて
さよならさえ億劫
ただ花が降るだけ晴れり
今、春吹雪

桜吹雪を描いた、古典文学的で煌びやかなサビの歌詞。

美しい情景が鮮やかに目に浮かび、思わず心奪われます。

 

風に吹かれて散っていく桜の美しさに、比喩を外せば過ぎていく時間の中で輝く命の美しさに、息も忘れて見惚れている主人公とその最愛の人。

《さぁ、今日さえ明日過去に変わる》

だから桜散り命舞うこの今という瞬間をただただ楽しんでいたい。二人でこの幸せな時間を過ごしていたい。

月並みな言葉で言い換えれば、そんなことが歌われている気がします。

 

アルバム『盗作』において、「春」は花咲く美しい季節、「夏」は春が終わり、かつて咲いていた花を追憶し懐かしむ季節として描かれています。

その意味でも、「春泥棒」で描かれている春の情景は思い出の中の景色であるといえるでしょう。

 

《今、春吹雪》

二人は今、幸せの真っ最中にいます。

 

2番

次の日も待ち合わせ
花見の客も少なくなった
春の匂いはもう止む
今年も夏が来るのか

高架橋を抜けたら道の先に君が覗いた
残りはどれだけかな
どれだけ春に会えるだろう

《次の日も待ち合わせ》

2番では、1番の歌詞からの明確な時間経過が見て取れます。

花見の客は少なくなり、桜シーズンはもう終盤。

言い換えれば、思い出の中での妻の命もそう長くはありません。

 

《残りはどれだけかな どれだけ春に会えるだろう》

春の終わりに妻の命を重ね、君と過ごせる時間の尊さを噛みしめる主人公。

1番以上に、そのいつか消えてしまう儚い美しさを意識し始めています。

 

もっとも当時の主人公は君の死期を正確には悟っていなかったでしょうが、今思い出を振り返っているのはそのずっと後の主人公なのですから、終わりの時間が迫っていることを明確に理解しています。

 

骨助
骨助

《春の匂いはもう止む》なんて表現がさらっと出てきますが、聞き流すには勿体ないくらい綺麗な表現です…

 

川沿いの丘、木陰に座る
また昨日と変わらず今日も咲く花に、

川沿いの丘の木陰。

昨日と変わらず、あるいは散りゆき少しだけ寂しくなった桜の花に、主人公は命を想います。

 

サビ2

僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
花散らせ今吹くこの嵐は
まさに春泥棒
風に今日ももう時が流れて
立つことさえ億劫
花の隙間に空、散れり
まだ、春吹雪

一番同様に、風が花散らす美しい情景を描いた日本文学的な歌詞。

1番と少しだけ違うのは、「嵐」「春泥棒」といった具合に、「風」つまり「時間」に若干マイナスのイメージが付与されているところです。

 

嵐が桜の花を奪っていく。

無常に流れる時間が、妻の命を奪っていく。春泥棒。

もう彼は、春の終わりの訪れを意識しながらその美しさに目を奪われています。

 

きっと桜が1年間ずっと咲き続けていたら、私たちは桜の花をここまで美しいと感じることはなかったでしょう。

それは日常の当たり前の景色でしかありません。

桜も命も思い出も、皮肉にもその終わりがあることを知っているからこそいっそう美しく見えるのです。

 

骨助
骨助

楽曲もいよいよ終盤。桜舞う季節は終わりを迎えようとしています。

 

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コメント

  1. あつき より:

    めっちゃいいブログですね

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