【Eve】の「心海(読み方:しんかい)」について、歌詞の意味を徹底的に考察および解説していきたいと思います。
✔ 映画「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌
✔ 主人公の新しい出会いと変化
✔ 時制ぐちゃぐちゃのマジック
「ジョゼと虎と魚たち」の世界観を反映した素敵な楽曲です。最後までお読みいただけると幸いです…!
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「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌
今回紹介していく「心海」は12月23日発売の新作EP「廻廻奇譚 / 蒼のワルツ」収録曲。
12月25日公開の劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」の主題歌「蒼のワルツ」を手掛けるEveさんですが、「心海」は同作の挿入歌として製作されました。
CD発売に先駆け、12月4日には同楽曲の配信リリースも始まっています。
Eveさんは同楽曲のMV公開の際に、
アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌「心海」のMVが公開されました。この作品の一部分を担えることができて嬉しいです。
とツイートされています。
原作「ジョゼと虎と魚たち」は芥川賞作家・田辺聖子さんが1984年に発表した名編で、足が悪いためにほとんど外出をしたことがないジョゼと、大学を出たばかりの共棲みの管理人・恒夫との純愛を描いた短編恋愛小説です。
挿入歌「心海」は一体何を歌っているのか。歌詞を中心に考察していきます。
楽曲名「心海」とは
楽曲タイトルは「心海」。読みは「しんかい」です。
楽曲の歌詞の中では、心を海に例えた表現が数多く登場します。
《何もわからぬまま 潜っては深く 息も吸えないで》や《鼓動は速く ざわめいていた
心海の果てに鳴る音が》などなど。
今回の楽曲タイトルはこの比喩を端的に表したものであり、また「この曲の歌詞では【海】という表現が前置きなく出て来るけれどそれは心のことだよ」というヒントを私たちに与えてくれているように感じます。
タイトルについて確認したところで、さっそく本題の歌詞を見ていきましょう。
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歌詞
幾星霜 期待もないようなふりをした
恥ずかし気に でもわかってる
というだけど双曲線 交わらないでいた
何もわからぬまま 潜っては深く
息も吸えないで微睡む白んだ光が僕を呼んだ
手を伸ばしてくれるならああ心はまだ応えられないまま
深い海凪いでは 理想描いた今
ただ痛いほど願って 忘れはしないからああこのまま立ち止まってしまったら
涙の味でさえ 知らないままだったな
君と笑って空想上の世界を泳いでみたい
黄昏の陽には 思い出が
流れ落ちた消極的 希望のないような口ぶりで
明日を見上げる空 困ったな
未来に縋ることさえも見紛うくらいの煌めく声が覗いた
傷だらけの夢だけど鼓動は速く ざわめいていた
心海の果てに鳴る音が
確かに生きた 君との証なら
きっと探していた 零れそうな 呼ぶ声が
今いくとああ心はまだ応えられないまま
深い海凪いでは 理想描いた今
ただ痛いほど願って 忘れはしないからああこのまま立ち止まってしまったら
涙の味でさえ 知らないままだったな
君と笑って
作詞:Eve
歌詞の意味・解釈
1番
幾星霜 期待もないようなふりをした
恥ずかし気に でもわかってる
というだけど双曲線 交わらないでいた
何もわからぬまま 潜っては深く
息も吸えないで
歌い出しでは楽曲の主人公の人物像が描き出されています。
「幾星霜」とは長い年月の事。
主人公はそのバックグラウンドこそ語られていないものの、長い間自分の殻に閉じこもっていた人物のようです。
劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」でいうところのジョゼにあたるでしょう。
MVでの黒髪の女の子。
何か言われれば「わかってる」というけれど、双曲線がどうやったって交わらないもどかしいさみたいに、実際に自分を動かすことはなかなかできず。
ただ深海に沈むように自分の世界に閉じこもったまま。
上手に生きられない。そんな人物です。
《幾星霜 期待もないようなふりをした》とあるように、期待していないふりをしているだけで希望を捨ててしまっているわけではありません。
ただ、置かれている状況や自身の境遇などから期待をおおっぴらに口に出す気にはなれずにいるようです。
微睡む白んだ光が僕を呼んだ
手を伸ばしてくれるなら
ここで消極的で閉塞的だった主人公の世界に、白んだ光が差し込んできます。
ここでの「光」の正体は主人公が出会った自分以外の誰か。後の歌詞での “君” にあたります。
映画での恒夫、MVでの水色髪の女の子です。
その人物は主人公を海の底から引っ張り出すように、手を差し伸べてきます。
《手を伸ばしてくれるなら》
堂々と期待してもいいんじゃないか。夢を追いかけてもいいんじゃないか。
揺れ動く主人公の心情。
今回の楽曲「心海」は、主人公が他者との出会いを通じて変わっていく物語に他なりません。
サビ1
ああ心はまだ応えられないまま
深い海凪いでは 理想描いた今
ただ痛いほど願って 忘れはしないからああこのまま立ち止まってしまったら
涙の味でさえ 知らないままだったな
君と笑って
自分一人では一歩を踏み出せない主人公にとって、深い海の底から連れ出してくれる誰かがいてくれることはまたとないチャンスであるはずです。
期待もないようなふりをしているだけで、本心では変わりたいと思っているのですから。
しかしなかなかそう簡単には素直になれない主人公は、痛いほど変化を願っていながらも、この時点ではまだ彼女(彼)を呼ぶ声に応えられずにいます。
「凪ぐ」の意味は「風がやんで水面が静かになること、心が穏やかになること」。
今回の楽曲での海はまさに主人公の心の比喩ですから、まさにこの言葉はぴったりはまっています。
誰かとの出会いを通じて心の荒波は消え果て、海から出る勇気は無いけれど理想を描き始めて。
まだ素直にはなれないながら、彼女の人生は確かに動き始めました。
《ああこのまま立ち止まってしまったら 涙の味でさえ 知らないままだったな》
この歌詞は《このまま立ち止まってしまったら》という現在の仮定と《知らないままだったな》という過去形が混在しています。
人間は意識して聴いていなければその辺の違和感を無視しちゃうものなので、初めて聴いた時は「このまま立ち止まってしまったら涙の味さえ知らないままだろう」くらいのニュアンスに感じるはず。
ラスサビはこの部分と全く同じ歌詞ですが、それまでの展開によって歌詞の聴こえ方が全く変わってきます。
2番
空想上の世界を泳いでみたい
黄昏の陽には 思い出が
流れ落ちた消極的 希望のないような口ぶりで
明日を見上げる空 困ったな
未来に縋ることさえも
2番冒頭は再び1番の冒頭と同じように、消極的で内省的な主人公の感情が描き出されます。
《消極的 希望のないような口ぶりで》
そんな口ぶりをしているだけで、実際は希望を心の奥底に抱いている主人公。
空想上では世界中を泳ぎ回って、黄昏の夕日を眺めては思い出に浸りたい。
だけど現実はそうはいかず、どうにも未来にすがれるほど楽観的にはなれず、明日の事をあれこれと考えては頭を抱えています。
見紛うくらいの煌めく声が覗いた
傷だらけの夢だけど
しかし心の海の底を漂う主人公に、再び誰かが呼ぶ声が聞こえてきます。
心のどこかで希望を抱いている彼女にとって、それは届くはずのない陽の光に見紛うほどに煌めいて見えるはず。
《傷だらけの夢だけど》
それでももう追いかけたっていい。
楽曲中の水面から飛び上がるような爆発音とともに、彼女の人生は光を浴びて輝き始めます。
3番
鼓動は速く ざわめいていた
心海の果てに鳴る音が
確かに生きた 君との証なら
きっと探していた 零れそうな 呼ぶ声が
今いくと
心のどこかできっと探していた、切に待ち望んでいた、自らの殻を打ち破る絶好の機会。
その心の海の奥底で、主人公の胸は期待に高鳴り始めています。
この鼓動が確かに君と生きたこの命の証。それならば。
《今いく》
ここで彼女は確かにそう応えています。
ずっと自分の世界の中で閉じこもっていた彼女の物語はここで幕を閉じ、ついに心海の外の新たな世界へ飛び出すのです。
ラストサビ
ああ心はまだ応えられないまま
深い海凪いでは 理想描いた今
ただ痛いほど願って 忘れはしないからああこのまま立ち止まってしまったら
涙の味でさえ 知らないままだったな
君と笑って
1番では違和感を感じた過去形の歌詞が、ここで綺麗に響いてきます。
《ああこのまま立ち止まってしまったら 涙の味でさえ 知らないままだったな》
「あのまま立ち止まってしまっていたら涙の味さえ知らないままだったな」
1番と同じ歌詞ですが、今度はそんなニュアンスに聴こえて来るはず。
あえて時制をごちゃまぜにするというEveさんの粋な言葉遊びが効いています。
もう立ち止まるのを辞めて前に進み始めた主人公。
出会いを通じて人生がポジティブに書き換えられていく、素敵な楽曲でした…!
感想
”君”との出会いにより変わっていく主人公を描いた作品「心海」。
心を海に例え、殻を破り希望を抱いて歩き出す主人公のその過程が見事に表現されているように感じました。
【Eve/心海】
歌詞の意味の解釈でした!
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